<園長のつぶやき その11> 園児指導「罪を憎んで子どもを憎まず」

 

友だちをたたいて傷つけた場合は、「ごめんなさい。」と素直に謝ることのできる子どもにしていきましょう。同時にいけない行いをしたときは素直に反省して謝るということを親としてはきちんと教えないといけません。

 

叱るときは、「○○ちゃんのお母さんに怒られるよ。お父さんに言うからね。」という人の力を借りた叱り方はどうかと思います。

 

子どもの目を見つめ、手を握り締め「もうしないでね。」とお母さんの悲しい気持ちをしっかりと子どもに伝えることが大切です。

 

 

<園児指導>

 

「大人になりたくな―い。」

「幼稚園をやめた―い。」

 

 

お家では誰にも拘束されず自分の思い通りの生活をしていたのに、幼稚園に来るとそうはいきません。先生や友だちのことを考えて生活しなくてはいけなくなるからです。

 

 

集団生活の始まりです。年少の初めの頃は、お部屋や園庭において実に様々な光景がみられます。特におもちゃの争奪戦、自分が遊んでいたおもちゃを、後からお部屋に入ってきた友だちにプイッと勝手に取られる。取った子は自分が昨日遊んでそのおもちゃがとても気に入り、幼稚園に着いたら一番にそのおもちゃで遊ぶぞと思っていたのでしょう。

 

 

おもちゃを取られた子どもの反応は、十人十色です。その子に対して何も言わない子、奪い返す子、泣く子、じだんだを踏む子、取った子をぐっと睨む子、先生ならだれもが一度は経験します。さてこのようなトラブルが発生したときはどのようにして解決したらよいでしょうか。

 

 

その現場を見た先生は、「こら、だめでしょ、友だちが遊んでいるものを勝手に取っては」と、おもちゃを取った子を叱ります。取った子に、いけないことはいけないこと(是々非々)をきちんと教えます。子どもによっては、どうして自分が叱られているかわからない場合もありますが、叱り方での基本は、決して「怒」ってはいけないということです。

 

 

叱るときには愛情が必要です。何の目的ももたずただイライラしていたから、むしゃくしゃしていたから、こんなときは怒っているときです。子どもに対して自分の感情をぶつけているだけです。これでは子どもは素直ないい子には育ちません。

 

 

子どもの成長を促す、次の改善に繋げることができるのが教育的な目的を持った「叱る」です。どうして友だちの遊んでいたおもちゃを自分が勝手に取ってはいけないのかを「こら、ダメでしょう。」と、「取るのは悪い行為である」の指導で終わる場合が多く見られますが、次の指導が必要です。

 

それは、改善行動に導いていくということです。即ち、同じ場面を作り、自分の遊んでいたおもちゃを取られた時の気持ちが分かる疑似体験をさせることが大切です。Aくんの悲しくなった気持ちを体感させることにより、改善行動に結びついていきます。

 

 

 

今、学校現場においては振り返り学習を大切にしながら教科学習や児童・生徒指導が展開されています。幼児教育(指導)においては、自分や友だちの心・体を傷つけた場合はしっかりと自分がやった行為を振り返らせ、どこがいけなかったのかをその子に理解させることが必要です。やってはいけなかった行為をこれからどのように改めていけばいいのかを子どもと共に考え、自分の言葉で約束させることです。

 

 

 

振り返りや謝罪(謝る)の仕方、させ方については、私が学校の先生だった頃は、生徒指導で5W1Hのやり方をよく用いていました。即ち、5W:①いつ、②どこで、③誰に、 ④何をした、⑤なぜ、そして1H:どのようにして、どうした。どうなった。

 

 

幼稚園でも子どもがいけないことをして園長室に誤りに来たときは、「ごめんなさい。もうしません。」では終わりにしません。ここからが教育です。誤りに来た子に5W1Hでゆっくりと、やさしく、ていねいに問いかけます。いつ?「鬼ごっこしていたときだよ。」どこで?「ドリームワールドのところ」・・・<略>

 

 

振り返りの中では子どもはごまかしたり、うまく思い出せなかったりと時間がかかることがありますが、厳しく問い詰めたり、大声をだして怒ってはいけません。ましてや、罰などを課すのはNGです。親や先生から怒られたくないためにその子は将来、失敗するたびに嘘を通して生きていく子になってしまいます。

 

 

「それは、おかしいね。」「よく思い出してごらん。」と優しい声で問いかけます。

自分のやった行いのどこがいけなかったのか、その時の友だちの気持ちはどうだったかを考えさせながら行動(心)の整理をさせます。

 

 

このように、5W1Hをスタンダードにして指導していくと、子どもも言葉を繋いで自分の言葉できちんと謝ることができるようになります。 

そして、最後に素直な気持ちで友だちに「たたいてごめんなさい。もうしないので許してね。」って言える子どもに育っていきます。

 

 

子どもたちは、幼稚園で多くの経験を通して「是々非々」の学習をしながら日々大きく成長しています。幼稚園は「心の学習」も大切にしています。