<園長先生のつぶやき その14>
「子どもたちは分からないことがいっぱい」
※夏休み前の話になります。
蒸し暑い日が毎日続いています。その中、子どもたちは暑さにも負けず「キャー、キャー」と楽しそうに声を上げプールやウオータースライダーに夢中になって遊んでいます。私は子どもたちがいたずらでかけてくる水しぶきから必死になって逃げています。
猛暑の中、年長組のみんなは3年ぶりに実施される「お泊り保育」に向けて、毎日クラスの出し物の練習に励んでいます。先日の学年練習に参加させてもらって、子どもたちに「ちくたくコール」を教えました。先生が「ちくたくコール、行くぞー」と叫んだら、子どもたちは「お―」と片手を挙げコールへと続いていきます。現地の三滝少年自然の家からは「ちくたくコール」の楽しそうな声がいっぱい聞こえてきますよ。保護者の皆様、お楽しみに。
さて、今回のつぶやきですが、こどもたちは毎日の集団生活の中でわからないことが多くて困っています。まだ生まれてきて3年~5年しか生活していないので無理もありません。では、その幼い子どもたちは何に困っているのでしょうか。
①活動の目的がわからない。
②先生の話していることばがわからない。
③やりたいことがわからない。
④集団生活の楽しさが分からない。
など、あげればきりがありませんが、子どもがはじめにつまずくのがことばです。大人の使っている抽象的なことばがわかりません。幼児期においては一度に覚えられる単語の数には限度があります。
私が中学校から幼稚園に赴任してきて一番悩んだのが、園児に話しかけることばです。
「気をつけ、礼。」と言ったとき一瞬、静かになりましたが、またすぐにワイワイ、ガヤガヤざわつき始めました。
「えーどうして?」と焦っていたその時、ある先生が「おはなし、やめましょう。」「手を棒のようにまっすぐのばして、カッコよくしてごらん。」と言ったとたんに子どもたちは、とても良い姿勢(気をつけ)になりました。幼稚園児にとっては、私の発した抽象的なことばはわかりにくかったのだと大いに反省しました。
特に、年々少や年少の子どもは発達段階から考えても、リンゴ・飛行機など絵に描けることばは理解できますが、はやく・きちんと・まん中・ちらかっているなど絵に描けないことばは、とても理解しにくいと思います。
子どもはわからないことを質問されるとコミュニケーション自体が苦手となり、何を聞いても「べつに、知らない」とか、全部「うん」と返答するようになり、そのうち何も答えなくなってしまいます。中には「バカ」とか暴言を吐いてしまうようになってくる場合もあります。
子どもに伝わりやすいことばは擬態語です。
「粘土をしっかりのばしてね」➜「粘土をころころのばしてね」
「まっすぐ、手をあげて」➜「手をピッと上げて」
また、動作があるととても効果があります。ことばでのコミュニケーションは全体の20%程度、80%は、表情や声色、ニュアンス、その場の状況など、その他の情報から成立していると言われています。
大切なことは、静止して正面からお話をしてあげることです。子どもは、大人が動きながら話すと、話している内容に着目しづらく大人の声かけ(質問)に気づきません。
次に子どものわからないことをなくす方法として、「一文一意」でおはなしをしてあげることです。即ち、子どもに伝えたいことは一つだけにするということです。
「ゆっくり歩こうね」「あぶないよ」「止まって」
このように伝えたいことを一つにすることで、子どもにはすっきりとした形で頭の中に入っていきます。
ー終わりにー―
子どもたちはわからないことがいっぱいで、時には不安な気持ちを抱え集団生活を送っていることもあります。そのことを大人が理解することの大切さを少しでも伝えることができましたでしょうか。子どもたちが安心してお友だちや先生とお話しながら、楽しい日々をちどり幼稚園で過ごしてくれるよう願っています。